かながわ県のやながわさん

YouTubeで「かながわ県のやながわさん」というカラオケ動画のチャンネルをやってます。歌うことも書くことも好きなので、好きなことはどんどんやってみようとブログも始めてみました。良ければお付き合い下さい。

「神様の宿る島」大神島

 

宮古島のパワースポットで調べると必ず出て来るのが「大神島」。

ひとりぼっちのフリーの日。
レンタサイクルを一日借りて、宮古島の市街地を巡ることにした。
近いところだけ回ろうと思っていたら、9時にレンタルして11時には回り終えてしまった。

他にどこかないかな?とスマホで探していると「大神島」が出て来た。

島尻漁港というところから船が出ているらしく、船で15分で行けるらしい。
次の出航は13時。

Googleマップで調べたら今いる場所から島尻漁港まで20分と出た。
余裕で行けるんちゃう?

もし、ある程度のところまで自転車で行ってみて、迷ったり「もうダメだ」と思ったら安全な所に自転車を停めてタクシーを拾えば良いんだし。

よし!行くか。
20分なんてすぐじゃないか。
行くと決めたのは11:30だった。

スマホGoogleマップでナビ案内してもらいながら自転車をこいだ。
あ~、風が気持ちいい。
車では通れないような細い道を選んで呑気にサイクリングを楽しんでいた。

Googleマップが「車設定」になっていることにも気づかずに・・・

しばらく走って、おかしいなぁと思い始めた。
まだか?と思って時計を見ると12時を回っていた。

ん?20分で着くんじゃなかったのか?
のんびり走りすぎたか?

もう一度Googleマップを開くと、到着まで18分と出ている。
2分しか縮んでない。
30分走ったのにおかしくないか?と思って、そこで初めて距離を見てみたら、まだあと8キロあるではないか。

その段階でようやく「車設定」になっている事に気がついた。

ヤバい!間に合わない!と全速力で漕ぎだした。
今にして思えばココが判断ミスだった。
折り返して市街地でタクシーを拾うべきだったのだ。
しかし俺は全力で島尻漁港に向かってしまった。

気付くとまわりの景色は見渡す限りの畑、畑、畑。
広い道なのに車なんてたまにしか通らない。
これでは流しのタクシーを捕まえるなんて不可能じゃないか。

タクシーに頼ることは出来ないと判り、とにかく自転車をペダルを漕ぎ続けた。
端から見たら、「月曜日から夜ふかし」の「桐谷さん」かと思われるような勢いで飛ばしていたはずだ。

宮古島を甘く見ていた。
市街地ではタクシーがバンバン走ってるのに、ちょっとメインから外れるとまるで通らない。

特別支援学校、満月食堂。
数日前に友人が運転するレンタカーで見かけた建物を横目に漕いで漕いで漕ぎまくった。
車に乗ってた時には気づかなかった地味な上り坂が、運動不足の56歳をあざ笑う。

脚はつりそうだし、腰も尻も痛い。
しかしここまで頑張って自転車を漕いできて、結局船に乗り遅れて行けませんでしたでは冗談にもならない。

真夏のような日差しの中、汗を後ろに飛ばしながら風を切った。

そしてようやく「島尻漁港」の文字が見え、なんとか10分前に島尻漁港に到着する事が出来た。
自転車を適当な所に停めて、乗船券を買うために歩きだしたら足が笑ってなかなか歩けない。
足が笑うと、疲れきってるのに可笑しくてつい笑い出してしまうのは不思議だ。

船員に聞いたら大神島には自販機もない(!!)との事なので、ペットボトル2本を慌てて買い込んで乗船したら、すぐに出航。
ふぅ~、マジでギリギリセーフ。

神様の宿る島「大神島」は人口20人、平均年齢75歳という小さな島。
島全体が聖域とも言われ、許された場所以外に足を踏み入れてはいけない(怖い事が身に降りかかる)し、大神島の物は何ひとつ持ち帰ってはいけないと言われている。

そういうネット記事を読みながら15分で到着した大神島に上陸した時には自然と「お邪魔させていただきます」と頭を下げていた。

全く観光化されていないので小さな食堂兼売店が港に一つあるだけ。
どこをどう回れば良いのか案内も全くない。

自分と同じように一人で来ていたおじさんがサッサと坂道を上っていくので、申し訳ないが10メートルくらい距離を置いてついて行かせてもらうことにした。

古い小さな民家が立ち並ぶ一角を過ぎると、「遠見台」という展望台への入口に着いた。
鬱蒼とした南国の植物の森の中に長い長い階段が続く。

その階段の上り口の辺りでそのおじさんが立ち止まっている。
どうしたのかな?と足元を見ると、なんと大きなヤシガニがでーんと居座っているではないか。

ヤシガニですか?」
とここで初めておじさんに声をかけると
ヤシガニですね。普通夜にしか姿を見せないのに珍しいですね」
と言う。
へぇーとヤシガニに近づいてスマホで写真を撮ったりしていたら
「気をつけて下さいね。噛まれたら指なくなりますよ」
ゲッ!怖っ!
ビーチサンダルで指丸出しの俺は思わず後ずさった。

でも普段は姿を見せないヤシガニが姿を見せてくれたなんて、歓迎してくれたようで幸先がいいぞ、と気分良く上り始めた階段は、自転車を漕ぎ疲れてヘナヘナの足には過酷過ぎて、途中で足がつりそうになってしまい、休み休み上ったのでさっきのおじさんはすっかり見えなくなってしまった。

そしてようやく到着した展望台はこじんまりとしてはいるが青い海が360度見渡せて、青い空に浮かぶ雲が気持ちよさそうに流れていた。
晴れた日の島の雲は本当に自由に泳いでるように映るから好きだ。

先に到着していたおじさんは俺の到着を待って降りて行った。
きっと「ひとりじめしなさい」と譲ってくれたんだろう。
汗ばんだシャツを風がなびかせて乾かしてくれるのでしばらくゆっくりしたかったけれど、ガイドさんと共にご夫婦がやって来たので、おじさんがしてくれたようにその人たちにその場所を譲った。

降り始めて「やっぱり」と思った。
行きにも感じたけれど、この森の中の階段は空気感が違う。
霊感はまるでないけど、なくても分かるくらい違っていた。
特に展望台のすぐ下にある大きなガジュマルの樹(たぶん御神木?)の辺りは凄かった。
島の中心部に位置しているし、きっとスゴいパワースポットなんだろう。
今でもあの階段の空気、御神木と思われる大きなガジュマル、歓迎してくれたヤシガニを思い出すと背中にゾワッした不思議な感覚が走る。

そしてここからがこの大神島の醍醐味だった。
遠見台に行ってしまうと、他に見るものが特にないのだ。

港から海岸に沿って右と左に道が途中まで舗装されているんだけど、どちらも途中で行き止まり。(これにも怖い話があるようなので興味のある人は調べてみてね)

3時間強の滞在時間の2時間以上は残っていた。
この時間を楽しめるかどうかで、この大神島を好きになるかどうかは決まると思う。

結果から言えば俺はとても気に入った。

車やスクーターやカートを所持してる島民もいるけれどほとんど使わないようで人工的な音が全くしない。
波の音と、葉ずれの音、そして鳥の声。
自然の音だけ。
でも決して静かではない。退屈でもない。
時々森の中でガサッという音の大きさに、つい身構えてしまうこともある。

大神島の何が良かったって、結局一番良かったのは島に吹き渡る「風」。
多目的広場という場所に日陰で休めるベンチがあって、そこに横になって風に身を任せた時は至福だった。
あんな気持ちのいい風に吹かれたのは生まれて初めてかもしれないと思うほど。
一旦やんで、また風が吹いて来る時の
「キタ━━ヾ(≧∀≦)ノ━━!!」
という快感は今でも体に残ってる。

帰りの船を待つ港も良かった。
「こんなとこに船が来るのか?」
と思うほどなんにもない長閑な港。
出航しても、観光地にありがちな
「バイバーイ!また来てね~」
と手を振る人など一人もいない。
観光客なんて迷惑なだけ。
そんなつっけんどんな島民の思いが伝わってくるようだ。

ふと、この島での生活に思いを馳せる。

宮古島まで行かないと何も買えない。
一日4便しかない往来の定期便で、島尻漁港に着いてから市街地までの足はどうするんだろう。
ただでさえ本数の少ない宮古島のバスが、船の到着に合わせて待っていてくれることなどないだろう。
それを考えたら買い物も一日がかりだ。
なのに最終の船から降りてきた80代以上と思われる足の悪いおばあさんはスーパーの袋に半分もない買い物の量だった。
水があって野菜は自給自足すれば、年寄りの
島での暮らしにさほど必要なものは無いのだろうか?
それとも重いものは若い者が代行して購入して来るシステムになってるのかもしれない。
20人しかいない島はきっとみんなが家族みたいなものなのだろうから。

遠見台までの道のりで年配の男性が2人、家の外壁を白く塗装していたのも、その時は家族かと思ってたけど、どちらかは助っ人だったのかもしれない。
みんながそれぞれ助け合って暮らす毎日。
「必要なことは迷惑かけても良いんだよ」
という俺の好きな言葉を当たり前にやっている生活。

その島に生まれ育った者(女)にしか伝承出来ない(しかも口頭でのみ)という祭祀の秘儀。
しかし子供の姿はおろか、若い人の姿も見なかった大神島の将来が気にかかる。
この「何もない」が最高の島を引き継ぐ人が現れて、今のまま後世に伝えていって欲しいと願わずにはいられない。

・・・なんて物思いにふけっていたら、もう島尻漁港に着いてしまった。
15分、短か!

ああ、これからまたあの道のりを自転車漕いで帰るのかぁ・・・
一気に現実に戻された。

そして這う這うの体で走り続けた先に、ファミマを見つけた時の喜び。
人工的な明るい光に満ちた店内。
溢れんばかりの食べ物と飲み物、雑誌に生活用品。
のどかだと思っていた宮古島は、大神島から見たら欲しいものが何でも手に入る竜宮城だ。

買ったばかりのキンキンに冷えたビールを、からからの喉に流し込みながら思う。
のどかも良いけど便利もね(笑)

宮古島に帰って来てからネットで大神島を検索したら
「呼ばれた人しかいけない島」
と書かれていて、自転車を必死で漕いで行ったのも神様に試されてたのかも、なんて勝手に合格気分を味わったりして。

今回の大神島は、過酷すぎたサイクリングと共に宮古島旅行の一番の思い出になったけど、あんまり他の人には薦めたくない。 肝試しみたいな遊び感覚で行く人が増えて欲しくないし、何より自分だけのとっておきの場所にしておきたい。

だったら書くな、という声が聞こえて来そうだけど・・・