3歳の頃に大阪万博に連れて行ってもらったらしい。
その記憶は残ってないが、自分が迷子になって大変だったという話は、大人になっても事ある毎に聞かされた。
真夏に行った大阪万博は、どのパピリオンに入るにも長蛇の列で、交代で並ぶことにしたらしく、父と3歳の自分だけが列に並んでた時のこと。
暑くて喉が乾いたのでジュースが飲みたい、と父に訴えたらしい。
そうか、分かった。じゃあ買ってくるからお前はここに並んでろ、と幼い自分だけを列に残して父は売店に向かった。
しかしその売店にはジュースはなく生ビールだけの売店だったので、父は自分が飲むためにビールを買った。
そして一旦、列に並んでる幼い自分の所へ戻り、
「今から別の売店に行って来るからコレを持ってなさい」
と生ビールを手渡した。
幼い子供にジュースとビールの違いが分かるわけがない。
しかも喉をカラカラに乾かしてる子供の目にはきっと生ビールの白い泡が美味しそうに映ったんだろう。
3歳の俺はその生ビールをゴクゴクと飲み干した。
そして酔っ払った3歳児はフラフラと列から離れて歩き出してしまった。
ようやくジュースを片手に戻って来た父。
あれ?この辺だったはずなのになぁと列の中にいるはずの我が子の姿を探していると、後ろに並んでいた人が
「あなたの息子さん、生ビールを飲み干してフラフラとどっかに行っちゃいましたよ」
と教えてくれたらしい。
それからが大変だった。子供は小さくてチョロチョロと足が早いから、親戚や家族が総出で探してもなかなか見つからなかった、と父が笑って話すと、決まって母が
「アンタが馬鹿なのよ!幼い子供にビールなんか持たせるから!」
と父を責めるのもお馴染みの流れだった。
今は亡き父に3歳からビールの英才教育を受けた自分は今でもビール党だ。
三つ子の魂百まで。
今も宮古島で連日浴びるほど飲んでいる。