ユタという存在をご存じだろうか?
沖縄県と鹿児島県奄美群島の民間霊媒師(シャーマン)であり、霊的問題や生活の中の問題点をアドバイス・解決を生業とする方で、主に女性(まれに男性)に多い。
以上、Wikipediaより。
沖縄でユタに見てもらった時のことを話そうと思う。
その人は全国的にかなり有名な方で、何か月先までも予約で埋まっているような方だった。
住所と名前(たしか苗字だけだった)を記入して、そのユタさんの前に座るとじっと俺の顔(顔を通り越してその後ろという気もしたが・・・)を見つめたかと思うと、
開口一番、
「あなた、車の運転はするの?」
と聞かれた。
「はい」と答えた。
通勤も車だし、仕事がら一日に何度も社用車で走り回っている。
「ん~~・・・どうしても運転しなきゃダメ?仕事にならない?」
と聞かれ
「はい。運転しないと仕事になりません」
と答えると
「そっかぁ、ダメかぁ。。。これから春過ぎまで危ないんだよなぁ・・・」
と独り言のようにつぶやく。
「え?運転がですか?事故の危険があるってことですか?」
と聞くと
「う~ん。。。まぁ仕方ないかぁ・・・。」
と明言は避け、
「じゃあね、地元に帰ったらすぐに交通安全で有名な神社に行って、お守りをいただくとか、出来たらお祓いをしてもらうとか、とにかく帰ったらすぐに行きなさい。絶対にだよ。すぐにだよ。分かったかな?」
と念を押された。
数えきれないくらいある長所(笑)の一つが「素直さ」である俺は、旅から帰った翌日に、地元の交通安全で有名なお寺に車を走らせた。
ものすごい山深い場所にある霊験あらたかなそのお寺の、一番てっぺんにある奥の院までお参りし、帰りにお守りをいただいて来た。
その2日後。
テニスをしていたらアキレス腱が切れた。
右脚のアキレス腱を。
医者曰く「スパっと綺麗に」切った。
右脚をやられてしまうと、車の運転は絶対に出来ない。
通勤ができないので仕事も休職。
コロナ渦だったせいもあるのか、医者は手術をしたがらず
「あなたもいい年齢だし、アスリートを目指してるわけじゃないんだから自然治癒で良いでしょ。」
と手術しない方針を告げられた。
なんでも、手術してもしなくても完治までに1か月程度しか変わらないのだとか。
ギブスが取れ、補装具が取れ、ようやく完治した頃には春が過ぎ梅雨に入っていた。
たかがアキレス腱、されどアキレス腱だ。
松葉杖がないと歩けないことがこんなに大変だなんて、実際に経験してみなければ分からないことだった。
不自由になった自分の生活に気を取られ、ずっと忘れていたのだが再び車の運転も出来るようになった時、ようやく思い出した。
あの時ユタさんに言われた言葉を。
「春過ぎまで車の運転をしない方がいいんだけどなぁ・・・」
え?もしかして。
このアキレス腱断裂って、俺に車を運転させないための天のお導きだったとか?
「こいつ、放っておいたら絶対に運転するよなぁ・・・」
「車通勤ですしね。間違いなく毎日乗りますね」
「さて、どうしたもんかねぇ」
「病気かケガでもさせますか」
「病気って言ってもなぁ。よほど重い病気でなきゃ運転しちゃうだろうしなぁ・・・」
「あ、こいつ、明後日テニスやるみたいですよ」
「テニスか。お!そりゃ都合がいいや。そん時にアキレス腱でも一丁切ってやるか」
「そいつぁ名案ですね。でも切るのは右脚のアキレス腱ですよ、間違えないで下さいね」
「おーそうだったな。左脚だったら運転しようと思えば出来ちまうからな。いや~久しぶりに腕が鳴るわい」
「どうやって切ります?じわじわ?スパッと?」
「そうだな。まぁ奥の院までこの長い長い階段を上って来た誠意に免じて、今回はスパッの方でいこうかのぉ」
「楽しみですね」
「楽しみじゃな。ワーッハッハ~」
そんな神様会議があったかどうかは知る由もないが、晴れて俺は右脚のアキレス腱を切っていただけた事で、そのままの生活をしていたら起こしていたであろう事故を免れることが出来たのではあるまいか?
そう考えると、
ユタさんに見てもらったタイミング、
車の運転を春過ぎまでしない方が良いというアドバイス、
お参りに行った翌々日に切れたアキレス腱、
否が応でも車の運転が出来なくなった数か月間。
すべてのピースが自分の頭の中でピタっとハマった。
そんなのはただの偶然だ、という人もいるだろう。
何を勝手に良い方に考えちゃってんの、と笑う人もいるだろう。
でも、自分の中では、ユタさんから助言をもらい、天のご加護で事故から守ってもらえた、と考えるのが一番腑に落ちるし、なにより、普通ならツイてなかったと思うようなアキレス腱断裂も、こう考えることでラッキーなプレゼントと思えて自分がハッピーになる。
自分がハッピーになる。
自分にとっては、生きてく上でこれが一番大事なことだ。
家族や他人の幸せを願うのも、日本や世界の平和を祈るのも、まずは自分がハッピーでいなけりゃ、そんなものはただの綺麗ごと、嘘っぱちだと思っている。
笑顔が笑顔を招くように、ハッピーがハッピーを呼び寄せるんだから。
あの時あのユタさんに見てもらってなかったら、と想像する。
様々な最悪の場面が浮かんで来て、平凡な毎日を送れている今が、この上なく幸せなんだと思える。
「信じるか信じないかは、あなた次第です!」
という決め台詞のテレビ番組があるが、俺はあのユタさんに救われたと信じてる。
簡単に人を信じやすくていろいろ騙されることもあるけれど、
「信じられぬと嘆くよりも 人を信じて傷つく方が良い」
と海援隊も歌っているではないか。
そして、今週からまた沖縄へ行く。
そろそろまた見てもらいたいが、簡単には見てもらえないだろう。
見る必要がある人、いわゆる「呼ばれる人」でないと、なかなか予約すら入れてもらえないらしいのだ。